リーダー・イン・ミーと社会性と情動の学習(SEL)
リーダー・イン・ミーは CASEL に *承認された社会性と情動の学習( Social Emotional Learning:SEL)のプログラムです。
CASEL(The Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)は、米国で1994年に設立された非営利団体で、学校における質の高いSEL教育を支援するために研究と推進を行うパイオニアです。 CASEL は10 年以上に渡り、SEL プログラムを審査しており、実証的なエビデンスに重点を置き、厳格な承認プロセスを採用しています。多くの学校でSEL教育が導入されつつありますが、その中でもリーダー・イン・ミーは、その教育効果の高さを評価されています。(*承認されたプログラムは幼稚園・保育園〜小学校までの内容が対象)
文部科学省「生徒指導提要」におけるSEL
令和4年12月に改訂された文部科学省の生徒指導提要の中でも、「学級経営」における生徒(児童)指導の観点からSELが明記され、教育活動に取り入れることが勧められるようになりました。単なる社会的問題行動への対処ということではなく、非認知能力の涵養が学力向上の大きな支えとなっているように、VUCAの時代に生きなければならない次世代の「生きる力」を支える土台を築くものです。
世界中で学校教育に取り入れられている数あるSELの中でも「リーダー・イン・ミー」は教育効果が高いプログラムとして評価されています。「自由進度学習」や「探求」など児童・生徒が自ら課題を設定し、主体的、計画的に学びを深めていくこと、価値観の多様化の中でGlobal Citizenshipを養うこと、早期からのキャリア意識とライフスキルを身に着ける事などが求められている中、「7つの習慣」をベースとしたリーダーシップの育成は、もはや学校教育に必須のものであるとさえ言えます。
CASELのフレームワークとリーダー・イン・ミー
CASELのSELのフレームワークは、児童・生徒の学習と発達を促進するスキルと環境を育成することに役立ちます。中心となるのは5つの社会性と情動の能力で、学習と発達を支える広範で相互に関連した領域です。
これらはすべてリーダー・イン・ミーの土台となっている「7つの習慣」と「実行の4つの規律」で育てることができる力であり、学校で教職員及び児童・生徒が効果的な実施ができるようにデザインされています。また学校での実施が保護者、地域・社会へとインサイド・アウトで広がるアプローチも仕組みとして構成されています。
リーダー・イン・ミーのフレームワーク


CASEL (CASEL wheel) |
リーダー・イン・ミー (参考教材の一例) |
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自己理解 |
自分自身の感情、思考、価値観を理解し、それらがどのように行動に影響を及ぼすかを理解する能力。確固たる自信と目的意識をもって、自分の強みと限界を認識する能力も含まれます。 | ![]() |
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セルフマネジメント |
さまざまな状況において自分の感情、思考、行動を効果的に認識し、目標や願望を達成する能力。 ストレスを管理する能力、自己規律、計画性、個人的・集団的目標を達成するための意欲や主体性を感じる能力も含まれます。 |
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責任のある意思決定 |
多様な状況において、個人の行動や社会的相互作用について、思いやりのある建設的な選択をする能力。倫理基準や安全への配慮、個人的・社会的・集団的な幸福のためのさまざまな行動の利益と結果を評価する能力も含まれます。 個人的・社会的問題の解決策を見出す。情報、データ、事実を分析した上で、理性的に判断する方法を学びます。自分の行動の結果を予測し、評価します。 |
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対人関係スキル |
健全で支え合える人間関係を築き、維持し、多様な個人や集団と効果的に関係を築く能力。 明確なコミュニケーション、積極的な傾聴、協力、共同作業による問題解決、建設的な対立交渉、社会的・文化的要求や機会が異なる環境での活動、リーダーシップの発揮、必要なときに助けを求めたり提供したりする能力などが含まれます。 |
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社会的認識 |
多様な背景、文化、文脈を持つ人々を含め、他者の視点を理解し、共感する能力。他者への思いやりを感じ、異なる環境での行動に関する広範な歴史的・社会的規範を理解し、家族、学校、地域社会のリソースやサポートを認識する能力が含まれます。 |
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CASELはリーダー・イン・ミーについて、こう述べています。
① 社会性と情動の力の発達を体系的に促進する、適切にデザインされたプログラムである
② 質の高い専門的な開発と実践のサポートが備わっている
③ 児童・生徒へのプラスの影響を裏付ける厳密な研究がなされている
「リーダー・イン・ミー」の開発を手掛ける米国フランクリン・コヴィー社は、時代を超越した原則と実証された実践を基盤とした受賞歴のあるリーダーシップ・コンテンツ、体系的な手法、研修、コーチング、ツールなどによって、あらゆる業界の組織が企業文化の変革を達成できるよう支援する世界的リーダーです。 こうしたノウハウは「リーダー・イン・ミー」の中にも取り入れられており、1999年に米国の小学校で「7つの習慣」が導入されてから、世界中の幼稚園〜大学の教育現場にも影響が広がり、実践と研究、実施調査が長期に渡り行われ、社会性と情動の学びが体系的に促進されるプログラムであることが実証されました。そして今でも研究や検証が行われ、発展し続けています。下記に一部、調査結果をご紹介します。
就学前児童
積極的な
社会性・情緒的行動
全体で34%増加
相互依存的な
社会性・情緒的行動
41%増加
自立的な
社会性・情緒的行動
33%増加
就学前の子どもたちが通う同じリーダー・イン・ミー校の2つのクラスで社会性・情緒力を調べる実験を行いました。約7週間の間、1つのクラスでは「7つの習慣」のリーダーシップ教育を含むリーダー・イン・ミーの学習を行い、もう1つのクラスは研究が終了するまでリーダー・イン・ミーの学習を行いませんでした。7週間後、学習の機会を得た子どもたちに変化が現れました。 (Dr. Loreta Andersen (2011) St. John's University)
小学校
行動改善率が
22.84%高い
規律違反の発生率が
13.17%低い
米国フロリダ州の小学校において、不適切な行動に対する罰則や注意を受けた児童の割合(規律違反)を調査しました。分析ではフロリダ州教育省およびコモン・コア・オブ・データから取り出した公開可能な学校レベルのデータを用い、行動傾向スコアを特定しました。リーダー・イン・ミー導入半年の学校(77校)と非導入校の条件(人数、地域性、学校状況など)をマッチさせ、比較した結果が示されています。( A Quasi-Experimental Study of the Effect of the Leader in Me School Intervention on Discipline Incidents in Florida Schools / Dr. Stephen Schilling (2018) University of Michigan)
7人中4人が目標達成、
2人が意図した目標に近い状態
へ到達することができた
社会・情緒面の目標設定における
4週間の達成率
スペリングの成績が、
7.2%向上
学習及び社会・情緒面において非常に困難な課題(家庭環境の問題、生活態度・規律の乱れ、反抗、自他に対する学習妨害行動など)を抱えるイリノイ州シカゴ南東部の4年⽣と5年⽣(合計7名)の児童に「⾃⼰管理ツール(4つの規律)」を4週間活用してもらった効果を調査しました。学習 (スペリング) と社会・情緒 (チームワークを通した「自制」「社会的関わり」「感謝」「やり抜く力」などの8つのカテゴリー評価) の両⽅について毎週、目標設定、追跡、記録、評価を行いました。Lisa N. Hines, Ed. M. (2015) Dort College
33%
リーダー・イン・ミー導入校は非導入校の児童よりも1年間の欠席率が少ない
(NEWELL, 2017)
62%
リーダー・イン・ミー導入校の教職員は、児童同士の関係性が良くなっていると感じている
(TUCCINARDI, 2018)
83%
リーダー・イン・ミー導入後、保護者の満足度、会議等への出席率に良い影響が出ている
(BOLDEN, 2019)
85%
リーダー・イン・ミー導入後の児童は教職員が自分のことを気にかけていると感じている
(ROI研究所, 2014)
リーダー・イン・ミー導入校の卒業生は「若い頃に目標を設定することが、自分たちの将来を導くことに役に立った」「目標を達成するために必要なスキルを身に付けられた」と評価した
(ASHLEY, 2018)
学校と地域社会の中で、共通言語を用いることは、学校と地域社会の繋がりや強みを認識することであり、すべての個人に対する尊重を育み、団結を生み出すことに繋がる取り組みである
( BRYANT, 2017)
カリフォルニア州郊外の学校調査で、リーダー・イン・ミー導入校では、児童同士の関係が改善され、対立解決の方法を生み出すことが増え、学校文化や雰囲気に良い影響を与えたことが示された
( TUCCINARDI, 2018)

リーダー・イン・ミーの学習は、児童たちが自分自身の中に価値を見出し、自分が誰で、どんな能力や障がいを持っていても、他の人と共有できる何かを持ち合わせ、自分の強みを伸ばすことができるものである
( BERGIN ET AL., 2018)
多くの教職員がリーダー・イン・ミーを導入した後、指導がより簡単で楽しくなり、より効果的になったと報告した
指導を通し、個人的にも教職員としても成長したと感じていると回答した
( BERGIN ET AL., 2018 )
(SWANTNER, 2016)
リーダー・イン・ミー校の教職員は、カリキュラムやその他の学校方針を改善・改革するために、自分たちの声を活用することができ、エンパワーメントの力を感じ、より自信を持てるようになったと感じている
( BENNET, 2020)
シカゴ郊外の学校を対象とした調査ではリーダー・イン・ミーの導入により以下の数値が向上している結果が示された
・リーダーシップ力
・児童の自信
・児童のエンパワーメント
・自分の意見を伝える機会
・問題解決スキル
(DANIELSKI, 2019)